夕日の思い出
私たち兄妹はとにかくよく外で遊びました。
普通の日でも夏休みになっても家にいる時間は少なく、ずっと外で遊んでいました。
私はただ友達と遊ぶ事が楽しかった、というのもありましたがそれより家にいなくていい口実が欲しかったのかもしれません。
夏休みともなると朝から近所の公園でラジオ体操が始まるんですが、それより1時間も早く行って遊んでいました。
私の子供の頃はラジオ体操のスタンプ帳のようなものがあって、体操をしたらその日の担当の方が「きちんと体操をしましたよ」の印にハンコを押してくれていました。
私たちはいつも一番乗りで行っていたので
「早起きでえらいねぇ」
なんて言われていました。
そして家では食事をするだけして、すぐに遊びに行き夜に寝るために帰ってくる。
そういう生活をしていました。
こんな事をしていても両親は何も言いませんでした。
「もっと勉強をしなさい」も「早く帰ってきなさい」も。
夕方も遅い時間になってくると友達の家からは声がかかるようになります。
「ご飯だよ。帰ってきなさい」
そうやって一人、二人と抜けていって最後に残るのはいつも声のかからない私たち兄妹だけでした。
いつものように最後に残ったある日、私たちは公園へ行きました。
公園のザイルクライミングというロープでできた塔のような遊具の一番高いところに登って、大きくて真っ赤な夕日を見ました。
空も真っ赤に染まって薄く紫がかかっていました。
二人で夕日が沈むまでただ黙って眺めていました。
後にも先にも一緒に夕日を見たのはその日だけです。